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異世界に行ったらヤードポンド法を使おう

現在使われているメートル法は地球の大きさを基準にした人間の都合を排除した単位系で
中世時代の単位系は身体尺と言って人間の体を基準にした単位系です。
よく、ヤードポンド法滅ぼすべしと言われていますが、
異世界転生したら単位系は身体尺を使った方が便利です。

特に異世界の住人の体格が違う場合はメートル法はうまく機能しません。

==重さの決め方==

1ポンドは人間が1日に必要な食べ物の重さであり1ポンドの小麦粉で焼かれたパンが1日分の主食量に相当します。
日本における米一合は一食分の白米約150gに相当しており1日分の主食量が約450gとすると1ポンドとほぼ同じ量になります。
全く関係のない単位系にも関わらず人体を基準にしたらだいたい同じになっています。
異世界転生したらその世界の主食1日分を1ポンドした新単位系を作りましょう。

ここで面白い偶然が起きているのが、敵兵1人を殺傷するのに必要な弾薬の重さを求めたら偶然にも1ポンドでした。

このため近代以前の銃火器の性能は飛ばすことができる弾の重さで評価されていました。

例えば戦国時代の火縄銃の場合は三匁五分筒(さんもんめ ごぶ づつ)と呼ばれ使用する銃弾の重さが三匁五分=13.13グラムで欧州式なら約200グレイン相当の銃と言えます。
つまり、銃火器の設計は先に弾頭の重量である弾量を決めて、その重さの球体を作ってから直径を測って銃弾の直径を求めます。
このため、イギリスでは大砲の大きさを第一次世界大戦のころでもポンドで表していました。

銃弾や砲弾が球体だったころはそれで良かったのですが、ライフリングのある銃火器が一般化すると弾頭は球体ではなく前後に伸びました。
そんな時代にイギリスでぴったり1英国ポンドの砲弾を飛ばせるライフル砲を造れと要求されて、
弾頭の直径を計算したら1.457英国インチ=37.0075086mmになりました。
撃った場所にいる敵を必ず殺す必殺兵器として誕生したのがQF 1ポンド砲です。

つまり、18ポンド砲なら18人殺し砲なのです。

そして、小銃弾薬でも大雑把には1ポンドの弾を撃ては敵兵1人を殺せる計算が成り立ちます。

人を生かすにも1ポンド、殺すにも1ポンドが必要なのです。

ここで小型砲の弾の直径が37mmと決まったわけですが、砲身を変えずに弾量を増やすために砲弾が前後に伸びました。
さらに榴弾以外にもさまざまな種類の砲弾が登場すると砲弾の重量は種類によって異なるようになり世界中の37mm砲の弾頭は1ポンドよりも重くなりました。
イギリス軍だけは伝統的というか英国面によってポンド単位を使い続けましたが、完全に名目だけになり実態重量とは関係なくなってしまいます。
こうして大砲の世界からポンド法は消えてなくなりました。

そして、第一次世界大戦にアメリカ軍が大参戦した時にアメリカ軍は大砲をあまり持っていませんでした。
このため、フランス軍から大砲を借りたのですが、その時にアメリカ軍砲兵はフランスからメートル法を叩き込まれました。
現代のアメリカ軍の大砲がヤードではなくメートルなのはこれが原因です。

アメリカ軍で銃と大砲の違いはヤード法で作られているのが銃でメートル法で作られているのが大砲なんてジョークまでありました。

==長さの決め方==

古来より人間は座って半畳、寝て一畳と言われてきましたが、

実は厳密な一畳の大きさは決まっていません。
現代では狭い部屋を広く見せるために小さい畳を使ったりするのでよけにわかりません。

そして、面白いことに、畳の大きさをヤード法で表現すると、
中京間の畳の大きさ182cm×91cm
6尺=181.818cm
2ヤード=182.88cm
厳密には「畳」は面積の単位なので「スクエアヤード」になり
「座って半畳、寝て一畳」を英訳するなら「座って1スクエアヤード、寝て2スクエアヤード」でだいたいあっています。

これが「座って1平方メートル、寝て2平方メートル」だと微妙に大きくなり無駄に大きくなります。
メートル法は人間の体格や生活と無関係な単位系なので切りの良い数字は人間にとって不都合なのです。

異世界に行ったら住人の体格や寝床の大きさを基準に異世界ヤードを制定しましょう。
これで、異世界ヤードポンド法が出来ます。

物を作る時にメートル法ではなくヤードポンド法から換算すると非常に便利です。

実際に戦前の日本では様々な物をヤードポンド法から翻訳する時に法律の100フィート規制をそのまま100尺規制にしたらうまく機能していました。

殺すにも1ポンドと書きましたが。
必殺の長さはどうなのかというと、銃弾の直径は0.01ヤードにするとちょうどよいです。

357マグナム弾の直径は0.357インチで約9.1ミリに相当しますが、これは切り良く0.01ヤードです。

10進数メートル法に慣れている日本人には非常にわかりにくいですが銃器の世界は12進数換算のヤード法を使います。

1ヤード→3フィート
1フィート→12インチ
1インチ→12ライン

約9.1ミリに相当する357マグナム弾は厳密には0.01ヤードなのですが、
ヤード法にはセンチやミリに相当する接頭辞が無く1センチヤードマグナム弾と呼ぶことが出来ません。
つまり、ヤード法の工作機械の目盛はインチとは厳密には誤差があり0.01ヤード≒0.357インチなのです。
ヤード原器を元に3分の1してさらに12分の1にしているために10進数で割り切れる数字になりません。
工作機械を作る工作機械であるマザーマシンというモノがあるのですが、
マザーマシーンにヤード原器をセットして正確に原器と同じ長さの目盛を刻みます。
そこから目盛り刻印機というマザーマシンを使って正確に三等分します。
ここで重要なのは目盛り刻印機は原器の長さを正確に三等分しているだけで三等分された長さが何ミリメートルであるか一切わかりません。
次の工程のマザーマシンは三等分された目盛を原器にして12等分するだけです。
さらに次の工程のマザーマシンは12等分された目盛を原器にしてさらに12等分するだけです。
ここで面倒なのが別の100等分マザーマシンが存在していて、1ヤードを100等分した目盛も刻みます、さらに1インチを100等分した目盛も刻みます。
完成した目盛で0.01ヤードのところを見てみると0.357インチと同じ場所を指しています。

0.357インチという半端な数字の正体はこれが原因です。

357マグナム弾の正確な大きさは0.01ヤードで厳密には0.357インチになりません。

1ヤードの3分の1が1フィートになるため1フィート=0.3333333333333333…ヤードであり
1フィートの12分の1であるインチは0.0277777777777778…ヤードになります。

ここから0.357インチを求めると0.0099166666666667…ヤードになってしまいます。
0.01ヤードよりも微妙に小さいですがヤード法で設計図を描くときは10ライン=12分の10インチ=0.835インチごとに公差0.005インチを取ります。
ヤードとインチの誤差が0.005インチの公差によって吸収されるので、
設計図が0.357インチの場合は0.0099166666666667ヤードでも公差の範囲に収まるので設計通りに作られた合格品になります。

普通にメートル法でマグナム弾が作られていたら、きっと1センチマグナムになっていたでしょう。

ちなみに、アメリカで開発された10mmオート弾は正確には10.17mm (0.4インチ弾)でメートル法ではありません。

異世界転生して銃を作るなら銃の口径は異世界の0.01ヤードにして大砲の弾は異世界ポンドで作ると良いと思います。

==種族別単位系==

ヤード・フィートの単位系が特に便利なのは多種族混合の集団に対応したマニュアルや規則を制定する場合です。
例えば、ホビット、ドワーフ、ヒューマン、エルフ、巨人族みたいな体格が大きく異なる種族が集まった連合軍に現実世界の軍隊のマニュアルを持ち込む場合、
塹壕の寸法をどうするか深刻な問題が生じます。

仮に各種族の身長をこれぐらいの設定だとした場合
ホビット:60~120cm
ドワーフ:120cm~160cm
ヒューマン:160~180cm
エルフ:170~190cm
巨人族:200~240cm

塹壕の大きさはどうやって決めたらよいのか?

このような状況ではメートル法はうまく機能しません。
多種族連合ではヤード・フィート法こそうまく機能します。

まず、種族事に足の大きさと歩幅を基準に一歩の長さの中央値を出してそれを1フィートと定義します。

つまり、種族ごとに1フィートの長さが異なります。

各種族ごとの1フィートを設定
ホビット:20cm
ドワーフ:26cm
ヒューマン:30cm
エルフ:32cm
巨人族:40cm

第二次世界大戦当時のアメリカ軍のマニュアルを異世界に適用する場合は
塹壕の大きさが横6フィート×縦2フィート×深さ4フィートとした場合、
各種族ごとの1フィートを基準に掘らせます。
部隊は中隊ごとに同じ種族で固めて同じ塹壕を使うようにします。
そうすれば各種族とも自分の体格に都合の良い塹壕が掘れます。

実際に日本軍は明治に欧米の教本を翻訳するときに1フィートを1尺にそのまま置き換えたらうまく行っています。
塹壕などは歩兵の体格に合わせて1フィートを自分の歩幅1歩として測るようにマニュアル化しています。

メートル法は武器弾薬などの共通化された工業規格が必要な物にだけ使用するようにした方が異世界ではうまく行くでしょう。

==種族別弾量==

357マグナム弾の正確な大きさは0.01ヤードと書きましたが、
その種族を殺傷するのに適した大きさを身体尺から求められるということです。
つまり、巨人族の1ヤードは40cm×3フィート=120cmになるので、
巨人殺しの弾丸は12mmにすれば良いことになります。
現実世界なら、ほぼ対物狙撃銃のサイズになります。
この理論で行くと10mあるドラゴンを殺せるドラゴンスレイヤーは50mmという計算になるのですが、
50mm対戦車砲じゃないとドラゴンは殺せない恐ろしい結論になります。

現実世界の軍用銃はホモサピエンスを殺傷することに特化した兵器なので、
異世界の異種族相手だと威力不足になるということです。
特に、巨大昆虫みたいに体に小さい穴が開くことに耐久性があり、
脳や心臓のような致命的な急所のない生物は銃で倒すのが非常に困難です。

銃火器を異世界に持ち込んで無双チートは意外に難易度高いです。

ドラゴンを銃弾で倒すことが非現実的なら、
実在する兵器でドラゴンスレイヤーになりそうな物があるかと言えばあります。
ドラゴンを戦車や装甲車とみなせば対戦車火器が有効です。
ドラゴンの鱗が厚さ2cmの高性能な装甲板に相当すると仮定した場合、
現実世界の自動小銃どころか50口径重機関銃や対物狙撃銃すら防ぎます。
しかし、これはドラゴンを飛行可能な装甲車として見たら強いけど、主力戦車として見たら紙装甲である可能性が高いことを意味します。

例えば40mmグレネード弾の装甲侵徹力は50mmあるのでドラゴンの鱗を貫通して内臓に大きなダメージを与えられます。
アーウェン37みたいな5連発リボルバーグレネードを使えば歩兵でもドラゴンを殺せる余地があることになります。
中国軍が使っている最新式の87式グレネードランチャーの装甲侵徹力は80mmもあるのに35mmグレネード弾12連発マガジンがあり連射出来て、
弾込みでも18kgぐらいで歩兵一人でも持てる大きさだから異世界に持ち込めば十分にドラゴンスレイヤーになります。

低空飛行目標も攻撃できるのでドラゴンが飛んでも大丈夫です。

ドラゴン相手に数百メートル以上離れて戦えるアドバンテージはものすごく高いと思います。

異世界転生する時は装備の選択をお間違え無く。

2 thoughts on “異世界に行ったらヤードポンド法を使おう

  1. youtubeから来ました
    大変興味深い話でとても感心しました

    ヤードポンド法でいうと距離はどうなのでしょうか
    私は東海道を歩いたことがあるのですが1里が1時間くらい歩いて
    休憩するとちょうど良い感じなので感心しました
    後何里歩くと日暮れだなとかご飯だなとかわかる感じです

    マイル1.6kmだと3マイル=1里と言えなくもないですが
    3マイルのほうが500mくらい長いので違和感があります
    マイル走とか400m(1/4マイル走)とかも人間の生理と関係がありそうです
    自動車メーターや野球のスピードガンもマイルにするのもなんとなく違和感がありますが
    アメリカ人だと肌感覚というか体になじむ感じがあるのでしょうか
    もし教ええていただけるとてもうれしいです

  2. マイルは古代ローマ帝国時代から使われていたらしいのですが、どうしてこうなったのかよくわかりません。

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