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自殺は正当な人殺し

 昔のイギリスをはじめとするキリスト教会法の世界では自分を殺す自殺も殺人の一種として殺人罪の扱いで、
17世紀以前は自殺を英語で「self murder」「self killing」「self slaughter」と呼んでいてたのは殺人罪の一種だったからです。
そんな時代にイギリスの詩人ジョン・ダン(John Donne)はイギリス初の自殺擁護論者として1608年に自著、ビアタナトス(Biathanatos)の中で罪にならない自殺という意味で「self homicide」という言葉を使いました。

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ジョン・ダン(John Donne)

 その後、イギリスの自然哲学者ウォルター・チャールトン(Walter Charlton)が1652年に出版した「自然の光によって払拭された無神論の闇(The darkness of atheism dispelled by the light of nature)」で初めて正当な行為としての自殺を意味する「suicide」という言葉が生まれました。

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ウォルター・チャールトン(Walter Charlton)


これ以降も自殺は犯罪だったのですが、時代が進むと精神疾患による自殺は罪ではないことになったりして自殺罪の適用範囲が狭くなって行き、19世紀になると自殺は不法行為ではなくなりました。

「suicide」はラテン語で自分自身を意味する「sui」と殺しを意味する「cide」の合成語です。
他人を殺す場合はラテン語で人間を意味する「homen」を使い「homicide」と呼びます。
殺人罪が「Murder」なのに対して正当防衛や戦争による正当な殺人を「Justifiable homicide」と呼ぶのは同じ人殺しでも「Murder」は不当な行為だけど「homicide」は正当な行為だからです。
だから正当防衛で殺された人は「Murder」ではなく「homicide」にしないと殺した人の正当性を否定することになります。
応用としては正当防衛と認められないことを批判する時にあえて「Murder」を使うのもアリです。

ここから派生して人間以外に対する正当な殺害行為にも「cide」が使われるようになりました。
例を挙げると沢山あります。

pesticide  殺虫剤
fungicide  殺カビ剤
herbicide  除草剤
germicide  殺菌剤
spermicide  殺精子剤
vermicide 殺寄生虫剤
genocide   族殺

ジェノサイド(genocide)が含まれているのはナチスの法理と主観において正当な行為として行われていた事に由来して虐殺を逃れたユダヤ人の法律家ラファエル・レムキンが第二次大戦中に作った造語で、
殺虫剤で害虫を殺すのと同じように虐殺する側は自分たちが正しいと思い込んでいると皮肉っぽい意味が込められています。

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